この記事では、中田達也(2019)『英単語学習の科学』第2章 覚えるべき英単語の見分け方 についてまとめます。個人的な勉強のためのノートではありますが、読んでいただける皆さんのための情報共有も兼ねています。
3. 語彙の意図的学習と付随的学習
3.1 意図的学習と付随的学習
第三章では、いよいよ効果的な語彙の学習について解説がされています。
語彙学習は、意図的学習と付随的学習に分けられるようで、両者はこんな学習です。
意図的学習(intentional learning)-語彙習得を主な目的とする活動で語彙を習得する
付随的学習(incidental learning)-語彙習得を目的としない活動で偶発的に習得する
例えるならば、意図的学習は素振りやサーブ練習など、個別の技能のために目的を持っ
て練習をするようなもので、付随的学習は試合を何度も経験すると、結果としてサーブも
上手になる、というようなものです。
そして、外国語学習の特に初期においては意図的学習が大きな役割を果たすと言われて
います。なぜなら学習初期に仮に英字新聞を読んだとしても、わからない単語ばかりなの
で、文脈を通して自然に学習が進む(付随的学習)は難しいからです。
3.2 文脈からの意味推測の効果
これは私の反省も込めて明記したいのですが、最近の日本の英語教育では、コミュニケ
ーション重視の方向性から、単語を文脈の中で学ぶべき、という傾向が強く、「意図的学
習は軽視され、多読などを通した付随的学習が奨励されることが多い」(p.17)と指摘され
ています。つまり、十分に準備ができていない(付随的学習がまだ効果的でない)学習者
に対してむやみに多読を薦めたりするのは逆効果かもしれない、ということです。
また、文脈から語の意味を推測しながら行う多読という学習法が語彙学習に効果的であ
るという通説に疑問を投げかける研究結果も出ています。
「多読」は私も多くの生徒にすすめる学習法の一つですが、「語彙を習得する」という
目的一つに絞るならばあまり効果的ではないようです。多読はそもそも、楽しみを第一の
目的として自分のレベルに合った英語の本を多量に読み、結果としてさまざまな英語の力
が身につくことを目指す方法ですが、「英語で楽しむ」その前段階にあるような学習者の
ためには、まず基礎的な力が身につけられるように意識的な学習に取り組むことを薦めた
ほうがよさそうです。
とはいえ、意図的学習と付随的学習のどちらがより良い、という話ではなく、学習の段
階によって適した方法があり、なおかつ、どちらにも一長一短の特性がある(意図的学習
は短時間で多くの語彙を学習できる一方、付随的学習では実際の文脈で語彙がどのように
使われるかまで、深く理解することができる)と理解し、どちらもバランスよく有効活用
できたほうが良い、と言えそうです。
それでは、付随的学習をどのように進めれば効果的な語彙習得ができるでしょうか。第
4章「付随的学習を促進する方法」でまとめます。
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