中田達也(2019)『英単語学習の科学』第1章「英単語を覚える」とはどういうことか

 この記事では、中田達也(2019)『英単語学習の科学』第1章「英単語を覚える」とはどういうことか についてまとめます。個人的な勉強のためのノートではありますが、読んでいただける皆さんのための情報共有も兼ねています。



1.1 語彙知識の様々な側面
「英単語を覚える」となったときに、まず皆さんが行っているのはなんでしょう。おそらく、「英単語とその和訳を覚える」ということだと思います。しかし、実は、英単語を覚えること=和訳を覚える では必ずしもありません。もし、 “gather”=「集める」と単純に暗記していると、その和訳に引きずられて、”collect”との意味の区別をつけることができません(gatherは「一箇所に寄せ集めるイメージ」、collectは「趣味として計画的に収集する」)。このように、英単語の実際の意味と、単なる和訳は一致していないことが多いので、単純に和訳だけを覚えても、実用には役立つとは言えません

 英単語には以下の6つの側面があり、これらの知識を身につける事が必要とされます。

語彙知識の側面
具体例
発音
routeには/rúːt//ráut/、二通りの発音がある 
品詞
increaseは動詞・名詞として使える
語法
suggestのあとはto VではなくVing
活用
「横たわる」という意味の動詞 lie の活用はlie-lay-lain
派生形
形容詞 accurateの名詞形はaccuracy
熟語
round は丸いという意味だが、a round number だと「端数のない数」という意味になる


 そこで、「英単語の和訳を覚える」というのは、語彙学習の第一歩として位置づけるべきです。そこを足がかりに、「発音」や、「品詞」(文中の役割)や語法(文のどこで使うのか)、活用形など、実際の使用のために必要な知識を身に着けていく必要があります。

1.2 語彙習得の基本プロセス
 語彙習得のために特に必要なプロセスが以下のように3つあるとされています。


①語形(word form)―単語のスペリングや発音を覚えること
hydrogen のスペルや発音を学ぶ
②単語の意味を知ること
hydrogenの意味を学ぶ
③語形と単語の意味(①と②)を結びつけること
hydrogenの語形と意味を結び付ける

 hydrogenは「水素」という意味ですが、第二言語として英語を学ぶ私達にとって「水素」自体は新しい概念ではありません。そのため、②の単語の意味を知ることについては、概念を新しく学ぶわけではなく、既知の事柄に結びつけるだけなので、優先順位が低いです。


1.3 コアミーニングの重要性
「英単語の和訳を覚える」ことだけが単語の学習ではないものの、上でも述べたようにそれを覚えること自体は学習の第一歩として有効です。和訳を使って英単語を覚える際には、”core meaning”(多くの語義に共通する、単語の中心的な意味)をつかむことで、学習効率を高めることができます。
例えば、”stress”には「圧力」「緊張」「強調する」のような様々な意味がありますが、そのcore meaningは「力がかかる」です。ここから派生して、名詞の「圧力」「緊張」や、動詞の「強調する」という意味を理解することができます。core meaningを掴むことで、単語が見たことがない使われ方をしていても、意味を推測することができます
  
つまり、その英単語に共通しているコアミーニングを押さえることで、様々な意味を学ぶことが容易になるということです。これは、単語の派生形の意味を理解する際にも役立ちます。例えば、 “draw”core meaningは「ゆっくり滑らかに引く」ですが、それから派生したdrawn (引き分け) drawing (図画、抽選会) drawer(引き出し)などにも、そのcore meaningが残っていることがわかります。

core meaningの考え方を利用すれば、英単語の表面的な和訳をすべて丸暗記する必要がなくなります。複数の似通った語に共通するcore meaningを掴むことで、多義語(複数の意味を持つ単語)の意味を効率的に学ぶことができます。英単語を学ぶ際は、その語のcore meaningにも注意を払うようにしてください。

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