中田達也(2019)『英単語学習の科学』第2章 覚えるべき英単語の見分け方

  この記事では、中田達也(2019)『英単語学習の科学』第2章 覚えるべき英単語の見分け方 についてまとめます。個人的な勉強のためのノートではありますが、読んでいただける皆さんのための情報共有も兼ねています。


2.1 働き者の単語と怠け者の単語
 英単語には、「働き者」と「怠け者」がいます。つまり、英語の文章や会話の中で使われることが多い(=出現頻度が高い)語と、そうではない(=出現頻度が低い)語があるということです。ということは、頻繁に使用される単語をまず先に覚えるというアプローチが必要になります。

 British National Corpus(BNC)という、イギリスの英語話者の発言や文章を記録したデータを分析したところ、最も頻度が高い1000語であらゆるテキストの80%、2000語で90%、3000語で93%を占めていることがわかりました。これは、使用されている語の中で最も頻度の高い3000語を覚えてしまえば、ほとんどの英語の文章や会話の93%までを理解することができることを意味します。
 
 ちなみに、 ‘the’だけで全体の7%を占める事もわかっていて、最も頻度の高い単語は代名詞や前置詞などの文法的な機能を果たす「機能語」だと言えそうです。

2.2    英単語の全体像

単語グループ
頻度レベル
語数
カバー率
高頻度語(high-frequency words)
1000~3000語レベル
3000
94~95%
中頻度語(mid-frequency words)
4000~9000語レベル
6000
3~4%
低頻度語(low-frequency words)
10000語レベル以上
多数
2%
NNation (2013)の研究における英単語の出現頻度によるグループ分け

 このように、Nation(2013)の研究によれば高頻度グループの3000語だけで、一般的な英文テキストの約94%をカバーすることができます。まずこの高頻度語をどんな手段を使ってでも覚えることが重要です。

 中頻度語を見ると、カバー率はだいぶ下がりますが、会話・映画・小説・新聞の理解のためには6000-9000語程度をしっている必要があるため(Nation, 2006)、上級者になるためにはこれらの語についてもしっかり身につける必要があります。
 
 英単語学習のためには様々な方法が考案されています。その中に、「多読を用いたアプローチ」、つまり、「多量の文章に接する中で、最初は意味のわからない単語でも、何度もそれに出会うことで語彙を身につける」という方法があります。

 しかし、そのようなやり方で文脈から自然に英語を学ぶには、インプット中で(英語に触れる中で)その単語に複数回触れる必要があり、少なくとも12回以上が必要だと言われています。

 Nation (2014)の研究では、高頻度語と中頻度語を文脈から自然に習得するために必要なインプットについて考えたところ、30万語の英語テキスト(小説約3冊分)を読めば、3000語レベルの単語は少なくとも12回繰り返される一方、中頻度語に12回出会うためには、300万語ものインプットが必要であるという結果が得られました。

 このことを考えると、高頻度語を習得してしまうためには簡単な英語の本をたくさん読むという方法が有効かもしれないですが、中頻度語の学習には、自然な学習に加えて単語カードや単語帳を使った、ある程度意識的な学習も組み合わせることが必要だと言えます。


  以上のように、英語で最低限のことができるようになるための「高頻度語」をまずなにがなんでも覚える事が重要であることがわかりました。Nationの提示した「高頻度の3000語」については、以前の記事(【単語学習】贅沢すぎる無料の暗記アプリ Quizletで自分好みの単語学習をしよう)でリスト化し、暗記アプリ「Quizlet」でみなさんが使用できるように公開しているので、重要語彙について興味がある方はそちらも御覧ください。

コメント