【ことば遊び】母音”a”だけでどこまで喋れる?




 先日、面白い動画を見つけました。



 a
の母音を含む音、つまり、五十音の中からあ か さ た な は ま や ら わ (ん) だけを使って小話を作ることに挑戦した動画です。このようなことば遊びのことを「リポグラム」というそうで、ある特定の文字を使わずに文章を書く、という試みです。もっと簡単に言うと、「ことばの縛りプレイ」でしょうか。

リポグラムの試みの中で、私が一番すごいと思っているのは、筒井康隆の『残像に口紅を』という小説です。この小説では物語が進行するとともに一つずつ文字が使えなくなり、たとえば「い」が消えれば「いぬ」など、「い」を含むすべての概念が世界から消えてしまう、という設定です。私は特に、使える文字が数文字だけに限られてしまう終盤の描写がとても好きです。

リポグラムの他に、すべての文字を一度だけ使って文を作ろうとする試みを「パングラム」といい、すべての五十音を一度しか使わない「いろは歌」もその一つだと考えられます。
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず

バカリズムのネタに、「言葉に関する案・いろは問題」という、自分で全く新しい「いろは歌」を作ろうとするものがありますが(調べてみてください)、とても面白いし、感心します。私は学生時代、これに触発されていくつか自分でいろは歌を作ったことがあります。

実は英語にも、「いろは歌」、つまり、26文字のアルファベットを一度ずつしか使わないことを試みたパングラムが存在します。

The quick brown fox jumps over the lazy dog.

すばしっこい茶色の狐がのろまな犬を飛び越える。

とてもシンプルです。ですが、見て分かるように、いくつか文字が重複してしまっています。とくに‘o’の文字が何度も登場しますよね。’o’の文字(音)を登場させずに文を作ることが、英語ではとりわけ難しいようです。

 以上に見たように、日本語でのリポグラム、あるいはパングラムよりも、英語でのリポグラム、パングラムのほうが難易度が高く、表現できる内容に量・質的な違いがある(日本語の方が情報量が多い文を作っている?)ということが言えそうです。どうしてなのでしょうか。

 その疑問に対しては、日本語の「音」を数える単位と、英語の「音」を数える単位が違う、という、音声上の違いを使って答えることができそうです。次回の記事(【発音】日本語と英語は、「音の数え方」が違う-拍と音節)でお話します。

 暇な休校期間中、皆さんもリポグラムやパングラムなどを使った「ことば遊び」に挑戦してみてはいかがでしょうか。全く新しいいろは歌、あるいは、英語のパングラムが作れたら教えて下さい。


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