【発音】日本語と英語は、「音の数え方」が違う-拍と音節



 前の記事(【ことば遊び】母音”a”だけでどこまで喋れる?)で、「あ」の音だけで作った小話(リポグラム)や、いろは歌(パングラム)の話をしました。日本語のパングラムと英語のパングラムを比べると、前者の方がより多くの情報を含んだパングラムが作れるようです。なぜでしょうか。

 それには、日本語と英語の基本的な「音の数え方」の違いが関わっているようです。日本語では、「リズム」上の一拍を単位とする「モーラ(拍)」で音を数え、英語では、母音を中心とした単位である「音節(シラブル)」で音を数えます

 例えば、日本語では「ふくおか」なら「ふ」「く」「お」「か」で4拍、「まんが」なら「ま」「ん」「が」で3拍です。英語では母音を核とする塊で音を数えるので、 ‘that’なら1音節、’dessert’なら2音節、‘tomato’なら3音節になります。これらをカタカナ語として読んでしまうと「ザット」で三拍、「デザート」で4拍と、本来の英語の発音からはかけ離れたものになってしまいます。特に注意すべきなのが、‘straight’のように、一見文字が多いので「ストレート」のように5拍で発音してしまいそうな1音節の語があることです。日本語では基本的に、母音、もしくは子音+母音で拍をを数えますが、英語では母音、もしくは子音+子音+母音、子音+子音+子音+母音、のように、複数の子音+母音で音節を数えることがあります。


 
 つまり、「モーラ(拍)」を単位として数える日本語は、一文字、もしくは一つの音のセットに「母音のみ」(あ行)、もしくは「子音+母音」(か、さ、た、な、…)を含んでいるため、それだけを使ってもかなりの情報量を示すことができますが、英語ではそのような単位で音を数えません。だから、仮にアルファベットを一度ずつ使って文を書くと、多くのことを表現することはできないのです。

 ところで、日本語では、「あ」の音だけを使ってかなり多くのことを表現することができますが、「子音だけ」を使って文を作ることはできません。なぜなら、日本語の音の基本単位は母音だけ、あるいは子音+母音の組み合わせだからです。基本的に子音だけで発音することがない言語なので、英語のように子音だけで発音する箇所があると、難しいのです。

 実は、英語同様に「音節」を音の基本単位とするチェコ語では、子音だけで文を作ることができます。普通、音節は母音を中心とするのですが、チェコ語では母音ではなく ‘r’の音を中心にして音節を作ることができるので、以下のような表現が可能になります。

Strč prst skrz krk 
ストゥルチュ・プルスト・スクルス・クルク「指をノドに突っ込め」
 Vlk zmrzl, zhltl hrst zrn 
ヴルク ズムルズルゥ,ズフルトゥル ハルストゥ ズルン
「凍った狼が一掴みの穀物を飲み込む」

 google翻訳にコピーして貼り付ければ、発音を聞くことができるので、試してみてくださいね。

 「音節」、「拍」の違いを理解するということは、英語の発音をしっかりできるようになることの第一歩です。 “straight”を5拍の手拍子で(つまり、日本語のモーラで)数えるのではなく、一拍の手拍子が終わるまでに発音し終わってしまう(英語の音節)ことができるようになれば、かなり聞き取りやすい英語を話せるようになると思います。もちろん個々の音、子音や母音の発音も重要ですけどね。

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